旧客


旧客

ジリリリリリリ…夜のホームに発車ベルが鳴り響く。
「かたん…きぃ…」客車がかすかに動き出すと、ほどなく「ガシャン!」という大きな音が。
連結器がぶつかり合う音がし始め、ホームがどんどん遠ざかって行く。
電灯のけして明るくない灯りの下で時刻表に目をやり定時発車を確認する。
網棚は「網」だし、床板も「木の板」である。
札幌を発車した列車は函館を目指し闇をゆっくり駆け抜けて行く。
車内は小樽まではほぼ満席だが、小樽を過ぎるにしたがい少しずつ客は減って行く。

真夏のシーズンなら床に新聞紙を広げて寝ている人も居た。
デッキにはギターを持った若者もいた。(ぼくも若かったけど)

踏切の警報機だけがけたたましく響き渡り、風が窓を抜けて行く。

あれから30年。旅は快適になったに違いないが、風情は失われた。

(この客車は夕張市に保存されている大夕張鉄道のものです)

コメント

  1. kazu_hiro より:

    この雰囲気たまらないですね。
    最新式の小奇麗なだけの列車は味気ないです。
    床板を踏む音とか、木の手触りとか、ワックスの匂いとか、木目のやさしさとか、そういう五感を刺激するものづくりをいい加減始めてもいいのではないでしょうか?
    最新式の新幹線で車内が木製だって良いと思います。
    現代風にアレンジしても良いのです。
    プラスチックとか安易な素材に逃げないで本物と対峙してみてほしいものです。

  2. Amy より:

    温もりのある木の椅子、網棚、昔、昔汽車通学していたので、とても懐かしいです。
    重いものを乗せると網が垂れ下がっていたのよね!
    古い物と新しい物、うまく利用出来ていくと良いのですが・・・

  3. jh8fht より:

    イヤー参りました・・懐かしいですね~
    網棚がたまりません、子供の頃、お袋の実家のある
    銀山(仁木町)に手をひかれて良く行きました。
    当時は一等車、二等車、三等車とあり、いつも今でいう
    普通席の三等車でした。

  4. ariari より:

    kazu_hiroさん
    そうですね、こういう客車が全盛期の頃はそれが当たり前でしたが、
    特急列車などがとても魅力的に快適な車両に思えました。
    今は新たにこういう客車を作るのは耐火性や防炎の問題で難しいようです。
    でも、やればできるのがJR九州で実現していますからね。
    ただお金が相当かかるようです・・・

  5. ariari より:

    Amyさん
    全国的に旧型客車が走る姿は失われつつあります。
    しかし、ロケにも使うので大切に走らせているところもまだあります。
    北海道にも数両ちゃんと懐かしい匂いをさせて走っていますよ。

  6. ariari より:

    jh8fhtさん
    やっぱりちゃんと網な網棚がいいですよね〜。
    一等車、懐かしい響きですねw
    あの頃はグリーン車なんかなくて。連絡船も一等船室でした。
    階級は差別的な表現があると、廃止されましたが、今でも
    一部フェリー航路などにはありますね。これも徐々に変わるようです。

  7. swallow より:

    網棚をハンモックという奴さえいた(笑)。
    古き良き時代。
    夜汽車がほとんどなくなって、旅情という言葉が似合うシーンに出会うことも少なくなった。
    便利さと引き換えに、何か大切なものをどこかに置き忘れて来てしまったようだ。
    いくつになっても、また旅に出たいよね。

  8. ariari より:

    すわさん、んだ。網棚に寝ていた大学生が車掌に怒られていたw
    懐かしいわww
    ブルートレインと呼ばれる寝台特急も夜汽車なんだけど、
    個人的には夜汽車は客車の座席車っていうイメージが。
    したがってそれが残るのは急行はまなすのみ。
    急行八甲田への思いもそのまま伝えてくれるんですよね。

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